002 村田良平氏|活版印刷 りてん堂店主

活版印刷の未来

大衡

村田さんはこれからやってみたいことは、何かありますか。例えば活版で本を作ったりとか。

村田

したいんですけどね。本を作るには、活字が足りないんです。数ページ分はあるんですけど、本を1冊作るには足りないんですよね。

大衡

活字見本帳とか作ったらどうですか。
村田さんはコンケラーって知ってる?イギリスの紙のブランドなんだけど。そこの紙見本帖がすごく格好良くて。

見本帖が欲しくて、コンケラーに資料請求をしてたな。もう30年近く前の話だけど、あの頃は請求したら現物をバンバン送ってくれて。いまはもう送ってこないんだろうけどね。そのコンケラーの紙見本みたいな雰囲気のものを、活版で作ったら格好良いじゃないかな。活版見本帖みたいな。

村田

活字見本帳ですか。いろんな人から「活版に適したフォントを自分で作ればいいやん」とは言われるんですよ。あんまりインクがたまらないようなフォントとか。

大衡

UDフォント(ユニバーサルデザインフォント)みたいな、見やすさや使いやすさにも配慮したもの?

村田

そこまでではないと思うんですけどね。
日本で活版印刷が本格的に普及したのは、明治時代からなんですけど、そのころは、手書きの文字を四角いマスに納めて、版として整えていました。この活版の歴史や雰囲気を生かしたまま、なんとかデジタルにできないかと。

大衡

フォントっていま、何十、何百書体と数があるけど、使うものって大体決まってるよね。僕は写植で仕事していた頃は、モリサワのフォントって、もっさいなと思っていたんですよ。写研のフォントの方が、なんかシュッとして格好良かった。

でも、いま写研の書体見本帳や文字組見本を見たら、古いんですよ。当時すごく格好良いと思っていたのに、いま見ると「あれ?こんな古くさかったっけ?」っていうくらい何かが違う。自分の感覚もやっぱり少しずつ変わっているんですよね。

昔からある正露丸のパッケージなんかも、少しずつデザインが変わっているのと同じで、モリサワも写植当時のフォントをそのままデジタル化したのではなく、デジタル用に少しずつ調整していると思うんですよね。

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